IPHとは Inside Pressure Hardening (内圧充填接合補強)の略で、コンクリート構造物の補修方法の中では便宜上、低圧樹脂注入のジャンルに分類されておりますが、他の注入方法とはその目的が全く異なります。
現在補修工事で多用されている「自動式低圧樹脂注入工法」は、躯体内部に雨水が侵入しないように表面のクラックを塞いでいますが、樹脂がコンクリートの内部構造まで達しないこともあり、強度復元力の弱さがネックとなっていました。
本工法はこの強度復元力を徹底改良したもので、独自開発の
①「穿孔」
②「空気抜き」
③「安定的な超低圧」
④「低粘性樹脂」
により、従来の低圧樹脂注入では不可能とされていた躯体表面から30cm以上(最大実証値170cm)への注入や、0.1mm以下(最小実証値0.01mm)への注入を安定的に実現する事ができます。
また、コンクリート構造物の穿孔穴内部から樹脂を放射線状に拡散させることで、末端の微細クラックまで接合補強して躯体を一体化させ、耐力を回復させる事ができます。
本工法の画期的な特長から、鉄筋とコンクリートの付着強度を高めるだけでなく、高い防錆効果も得られる唯一の高密度充填工法として、土木学会の技術評価を得ています。
表面ひび割れからの注入では、注入樹脂の浸入深さや広がりが安定しない問題がありますが、IPHミストダイヤ(注入孔に粉塵が残らない水循環型穿孔機)により、注入ポイントに直径7mm深さ50~110mm(標準)の穿孔を行うことで、注入拡散ポイントを躯体内部に置くことができ、コンクリート内部を深くそして広く充填接合できます。
従来工法のように、【ひび割れ表面から押し込む】のではなく、【内部から放射状に拡散させる】というイメージです。
ひび割れや内部空洞のエアーは、注入を開始する時点で加圧圧力と同等の反力エアーとなり、注入材の浸透を押し戻そうと抵抗します。
注入開始時に反力エアーを抜き取ることができる機能をIPHカプセルは備えており、安定的に鉄筋周囲やコンクリートの奥深くまで充填が可能となっております。
一般的に低圧樹脂注入工法による加圧力は0.4N/mm2以下と定められています。IPH工法で使用するカプセルの加圧力は、スプリング(ステンレス)で作られているため、初速圧力を0.06N/mm2±0.01~0.02N/mm2という超低圧に抑えることが可能です。
これにより毛細管現象も生かされ、まるで植物の葉脈すべてに水分や養分が行き渡るようなイメージの高密度かつ高精度な充填が可能となります。
一般工法では注入用の樹脂の粘度がJIS規格で1000mPa・s以下と定められています。本工法では高流動性エポキシ樹脂(E-396H 550 ± 200mPa・s(23℃))を使用することで、微細なひび割れや鉄筋周囲まで高密度な充填を実現します。
劣化部・ひび割れ部をVDRダイヤモンド吸塵システム※で研磨。欠損部はIPH#600で補修し注入ポイントをマーキングする。
※吸塵システムにより、粉塵飛散のリスクが大幅に軽減されます。
注入カプセル取付位置を水循環型のIPHミストダイヤ※で穿孔する。
※孔内のはつり粉を回収することで、内部の微細なひび割れへの注入、樹脂の付着力確保が可能となる。
注入ポイントにピックアップシールを用い、JP台座を取り付ける。(低温時等、高速硬化が必要な場合には、クイックシールを使用する)
注入ポイント以外のひび割れ箇所は、漏れ防止のためピックアップシールで密閉する。
(高速硬化の必要な場合には、クイックシールを使用する)
注入カプセルおよびピックアップシールを取り除く。
VDRダイヤモンド吸塵システムで平坦に研磨し、IPH#300を塗布する。硬化後、無機系通気型撥水塗料セラブレンドP-5000で塗布仕上げをする。